異文化に触れたら着物が着たくなった。
~プロローグ~
【 異文化に触れたら着物が着たくなった。】
海外での生活経験は、自国を見つめ直し異なる文化に対する理解が深まる機会となります。
これまで数か国の海外旅行経験しかなかった私が、イギリスのロンドンで暮らすことになりました。
(2年間という短い期間でしたが・・)。
日常生活の些細なことでも戸惑うことばかりで、当初はひとりで出かけるのも怖かったのですが、家に閉じこもってばかりはいられません!
毎日少しずつでも外出するように心がけているうちに、いつしか不安は減り新たな発見に毎日が楽しく新鮮でした。
今回はプロローグとして、多様性に富んだ国で生活したことによっての気づきと、その後私が着物を着るようになったきっかけについてお話したいと思います。
【人々が人生を楽しんでいるように感じました】
私がイギリス生活で大きく影響を受け、日本に帰国後も意識して考え方を変えていることがあります。
それは
「みんな違っていいんじゃない?」
「どう思われるか気にしすぎじゃない?」ということです。
イギリスでは自己表現が自由で周囲を気にすることなく人々が人生を楽しんでいるように感じました。
最近よく耳にする多様性ですね。
イギリスは多様性の象徴、移民が多く異なる人種や文化が共存している多民族国家。
一方日本は単民族国家です。
同じ島国であっても経てきた歴史の違いでこんなにも国民性や文化が違ってくるんだと実感させられました。
海外で生活する中で、日本の伝統、美意識、おもてなしの心といった日本の良さを改めて感じ、
その一方で日本にはまだ足りない「多様性を認め合うことの豊かさ」を肌で感じ、そしてそれが私の着物生活にも影響を与えていったのです。
【伝統の尊重】
イギリスの歴史は深く王室や建築、イベントなど伝統を大切に継承しています。
日本も豊かな歴史と伝統的な美意識や芸術などが日常生活に根付き守り伝える国として共通しています。
実は着物とは無縁だった私が着物を手に取るきっかけとなったのが、イギリスの伝統行事のひとつであるロイヤルアスコットという英国王室主催の競馬レースです。
イギリスでは毎年6月に開催され、ロイヤルファミリー、イギリス社交界などが集まる華やかなそのイベントに参加したかったのです。
一般席であってもドレスコードはフォーマルドレスに帽子かヘッドピース。
何を着て行こうか悩みます。
ドレスを着てもきっと似合わないし、あの帽子はちょっと恥ずかしい・・とここでも周囲を気にする私。
やはり日本人として民族衣装の着物で参加することに決めました。
一時帰国の際に日本で着物を準備しロンドンへ戻ったところから私の着物生活が始まりました。
ちなみにロイヤルアスコットはコロナ禍になり参加できぬままの帰国となってしまいました。
【美意識とファッション】
日本人の美意識と精緻さは、
建築、庭園、工芸品などあらゆる面で感じられます。
日本の技術の繊細さや品質へのこだわりが他の国々と比較してもすばらしく、着物に接することが多くなった今、また更に着物の芸術的な美しさや繊細さに感動させられます。
美意識とファッションは密接に関連しています。
美意識は美しいと感じる要素や価値観を持つことであり、ファッションはその美意識を表現する手段の一つです。
日本のファッションは、ストリートファッションなど新しいトレンドが発信されていますが、一般的には個性を主張することに違和感をもち、個性より協調性を強く重んじる人が多いように感じます。
【自分自身の個性やセンスを大切にしたスタイルを好んでいる】
ロンドンの街中では、私が想像していたよりずっとシンプルでレギンスにスニーカー姿が目立っていましたが、流行やトレンドに追従するよりも、自分自身の個性やセンスを大切にしたスタイルを好んでいるようでした。
多民族ですので様々な民族衣装で過ごされている方も多く見かけましたし、驚いたのはTUBE(地下鉄)でテルマエロマエの姿で普通に乗車されていた時です。
自分がこれまで周りからどう思われるかを気にしすぎてきたのではないか?
と海外生活で初めに感じたのは、日常のファッションからかもしれません。
夏なのにダウンジャケットだったり体形を気にせず好きなスタイルだったり、もちろんそれぞれの民族衣装も堂々と着てらっしゃいます。
私は日本で着物を着た時、周りの目が気になりました。
誰も着ていない町でなんだか目立って恥ずかしい・・・という気持ちがなかなか払拭できなかったのです。
【おもてなしの心】
他人に配慮し、思いやりのある行動は日本のおもてなしの心として、心地よさを与え他国からもすばらしいと評価されています。
しかし海外で同じようなおもてなしはないにしても、サービスが悪いとか不快に感じたことはありませんでした。
カフェで長時間居座っていても嫌な顔もせず、明るく「enjoy?」と何度も声をかけてくれます。
確かにいつになったらオーダーを取りに来てくれるのかとイライラすることもありますが、それも考え方次第でゆっくりメニューを選んでねっ!
ていうことなのでしょう。
シンプルな海外のサービスに慣れれば、逆にどこまで日本の過度なサービスが必要なのか疑問に思うことさえあります。
【 まとめ 】
海外生活を経験したら、個性を恥ずかしがらず認め合うことでより幅広い視点やアイデアが生まれポジティブな変化につながること(多様性)を学び、日本の伝統に目を向けることで着物に興味を持つきっかけにつながり、
さらにそれをもっと多くの方々と共有し楽しみたいという想いからまた新しいことに一歩踏み出すことができました。
これも「どう思われるか気にしすぎじゃない?」
が背中をおしてくれたおかげです。
海外での経験を通じて得た新たな視点や価値観を日常生活に取り入れ、また新しい出会いと気づきにつながることを楽しみにしています。
この記事を書いた人
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kimono 梛 ~nagi~合同会社mavie 代表 海外生活そして帰国後すぐの癌発覚~治療を経たことで、 |